「飾ること」と「在ること」:ファッションから考える衣料品ロスについて

Saki Tsujihara
11 min readFeb 27, 2020

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hello, here tsujihara.

さいきん懸案事項が多いのか、ベッドに入っても3時間くらい入眠できずうだうだする日々が続いています。ベッドで毎晩2冊くらい本が読めています。だいたい毎月kindleに5万〜10万くらい課金していて、特に漫画を爆買いすると結構な金額になるのですが、kindle以外にめぼしい課金先がないので本と映画にだけは湯水のようにお金をつぎ込むのを生きる力にしている辻原です。

最近爆買いした漫画は「モブサイコ」と「ランウェイで笑って」と「ハイキュー 」です。課金先の漫画から1つ、下記の作品を取り上げたいと思います。

ランウェイで笑って / 講談社

ファッション関係のベンチャーさんのデザインをサポートさせていただいていた時期もあったのに、私自身はすごくファッションに疎いのでこの作品を「少年少女の奮闘まじ尊み溢れて逆に尊い」みたいな、色即是空・空即是色みたいな気持ちで読みました。現在14巻まで刊行されています。面白いよ。14巻とかだと一晩で読んじゃう。

内容はパリコレモデルになりたいのに身長が低い主人公の女の子と、パリコレブランドのデザイナーになりたい男の子が奮闘する話です。よくあるっちゃあるストーリーです。

私のような心の曇った大人が読むと、こういう漫画は「自己表現のためのファッションて」とか「商業主義がいきすぎた業界なんて」とか思っちゃう。でもそもそもファッションって何のためなんだっけ?って内省しつつ面白かったので最近のニュースも交えて考えてみたいと思います。

「スクールカースト黄金世代」にとってのファッション

スクールカーストが何かとかは、もう言わなくてもいいはず。辻原は現在33歳で、多分「スクールカースト黄金世代」と言われる時期に中高生だったんだと思う。ドラマの「野ブタ」とか漫画の「ライフ」とか流行った世代だ。私たちが中高生の頃のファッションやオシャレなんかはカーストポジションのためのツールだったような気がする。

カーストのピラミッド自体は「異性評価」と「同性評価」によって成り立つんだけど俗的には「モテ」みたいなことだ。

先日社内のブランディングプロジェクトでデザイナーの北町くんが調べてくれていたのを覗き見してたんだけど

引用元:外資系OLのぐだぐだ(旧)

女性のファッションを分類するマトリクスを見るとおおよそ「モテ」という軸がある。そして見てもらえばわかるけどその「モテ」ジャンルに群するのはおよそティーン系ブランドなんだよね。

なぜこの時期に「モテ」が重要かというと、人間の成長段階としてマズローさんの例のピラミッドでいう「承認欲求の段階」であるからに他ならないのだけど、青年期への道中においては「他者評価によって自己評価をする段階=他者を通じた自己形成」が必ず必要である。(これを大雑把に思春期というんだけど)であるなら、私たちは成長段階において「他者評価を通じた自己形成」のためにファッションを「自身を飾る道具」として活用してきたと言えるかもしれない。

私たちにとって「着る」とは一体どういうことだろう。

筋肉・肉体主義とノームコアファッション

あんまり筋トレはできていないのですが、ゴールドジムのイチ会員として最高・最上のファッションは「裸体」みたいな、着飾るんじゃねえ磨くんだ!みたいな風潮は嫌いじゃないしむしろ好きだ。

個人的に関心があるのは「筋肉・肉体主義」の高まりとノームコアの流行が同時期だったことで、これはあんまり偶然ではないと思っている。

ノームコアファッションの反動的に台頭したSupremeの隆盛は「あえて」とか、ブランドに対して斜に構えながら消費することの美意識を示して見せたように思う。彼らの斜加減はメタ的だ。

「僕はこれに高額を出すよ、あえてね。」

1枚数万円にもなるTシャツが示したのは、ブランドの高付加価値というものの物理的実態が「ラベル」であり、非物理的実態が「意思表示」であるということだ。私たちの消費という行動は「いいモノ・必要なものの市場的合理取引」のように見えて、意外とすでに「恣意的な社会批判」である。

機能と哲学と美意識

そもそも衣類は「身体を適切な温度・清潔さに保つための道具」であるという見方をするとアプリケーションとしての機能の高さはそこまで重視されない。本来なんだっていいはずだ。アニメイラストが書かれていようが、変な英語のメッセージが書かれていようが。

ジョブスやザッカーバーグのファッションについてもここで筆を改める必要はないがしかし、彼らのファッションは彼らによって恣意的に「選ばれて」いることは充分理解したい。彼らにとってはアニメイラストや変なメッセージという余分な「意味」は無駄だった。なんの変哲も無い<ように見える>タートルネックとグレーのTシャツ、それにブルージーンズ。それは明確に哲学や美意識の表出である。(そもそもタートルネックはイッセイミヤケの高いやつらしいし)

ラガーフェルドの遺産と人間という彫刻

2019年に近代ファッション史におけるアイコンが一人亡くなった。(というか彼の仕事の全てを知っている訳ではないし、なんなら亡くなった時に彼の仕事の大量のアーカイブを見ただけ)文明とはファッションとともにあるなあと、これは近代人類史の遺産だなあと強く感じた。

bazaar:カール・ラガーフェルド、シャネルのショーでの素晴らしき瞬間100

これを見るとファッションは「動く彫刻」っていう感じがする。「美を追求する唯一の生物」が人間だと誰かが言っていた気がするけど、人は美によってより高次の知性を身につけてきたと言ってもいいんじゃないかとすら思う。いや、間違いなく存在美とは知性だ。

彼の仕事はいたずらに襟を高くすることじゃなく、美によって人間の知性や品格を高めることだった。とか、そういうロマンを込めて彼の仕事を見つめたいよね。

衣料品ロスを巡る活動

2019年、辻原的にショッキングだったムーブメントの一つに#boycottfashionがある。

WIRED:「52週間、新品の服は買わない」

世界中で50万人を超える若者たちが気候変動のために行動を起こしている現在、リサイクルやアップサイクルされた衣類のみを手に取るよう呼びかけるこの運動が、Z世代(1990年代中盤以降に生まれた世代、 現在25歳以下)を中心に支持を集め始めている。

52weeksなのは1年間の活動だからだ。1年間彼らが新しい衣類を購入しないということは根本的な解決になるのか?個人的にはビジネスって生態系だと思うんだよね。

というか、根本的な解決ってなんだ?

15億着の「売れ残り」

翻って日本では年間15億着新品の洋服が売れ残っていると言われている。現在日本人口は1.2億人程度なので一人当たり10着強の売れ残りって感覚です。

先日ガイアの夜明けでやっていたのだけど、「カラーズ」という企業はファッションの売れ残りや在庫を抱える末端企業から商品を買取り、安値で販売することによって「在庫をハケさせている」。いろんなブランドから商品を買取りタグを落として店頭に並べ、付加価値を払拭し純粋にモノにして売る。1着100円で商品が店頭に並ぶこともある。

確かに在庫を抱えているよりは消費者の手に渡った方がいい。在庫を抱えたままだと生産業者も身動きが取りづらいしね。今年は暖冬なのも影響し大変だったらしい。

番組の最後では確か社長がバングラデシュでジーンズメーカーを立ち上げてたような気がするんだけど「結局作るんかい」って一人で声を出してツッコんだ記憶がある。作るんかい!

結局無駄に消費者に流したって、中古か衣類ゴミが増えるだけなんじゃないかなと思ってしまう。うーん…根本的な解決ってなんだ?

バーバリーと廃棄問題

私たちの記憶に新しい、2016年ごろに噴出した英バーバリーの新品焼却問題がある。

businessinsider:もう燃やさない…… バーバリー、消費者の批判を受け、売れ残り商品の焼却処分を取り止め

私の記憶ではちょうどロゴの変更とかアートディレクターの交代とかでブランドが大きく変わるっていうタイミングだったのもあった気がするけど、この問題はブランド離れも起こしたしアンチ・ラグジュアリームーブメントの先駆けにもなった。

「モダン・ラグジュアリーは、社会的かつ環境的責任を負うことを意味する。この信念はバーバリーで働く者にとっての核であり、わたしたちの長期的な成功のカギだ。製品に当てるのと同じだけの創造性をバーバリーの全ての部分で生かすと約束する」

この宣言通り、バーバリーのアパレルラインのモデルチェンジのスピードは非常に緩やかなったし、品切れのギリギリまでオンラインストアに商品が残るようになった。意外とみんな知らないけど、2018年モデルのスニーカーがサイズ残りでまだ売ってたりするんだよ。デザインも単年売り切りから長期的なものに変化してきた。

アレキサンダーマックイーンの産学連携支援

「アレキサンダー・マックイーン」アーカイブ生地を英ファッション学生に寄付

このニュースは単純にかっこいいな、と感じる。

私もデザインという仕事に従事して強く感じるのは、いかに我々の仕事が「文化という社会資産の恩恵を受けている」かということ。還元というと言い過ぎな感じもするけど、このような形で次世代にバトンを渡していくというのはエモいしヒロイックだ。

売れ残り品の廃棄禁止へ/仏

フランス政府が2023年までに“売れ残りの商品の廃棄”を完全禁止へ

去る2019年6月4日(現地時間)、フランス政府は2023年までに売れ残りの洋服や非飲食品の廃棄処分を完全に禁止とする意向を表明した。環境保護とサステイナビリティ(持続可能性)の意識が世界的に高まる中、この新たな法律が誕生した場合、ラグジュアリーファッション業界にも影響を及ぼすと見られている。

可決したのかと思ってたけど、まだ表明のステータスなんだったか。

アダストリアの「アップサイクリング」

倉庫の服を黒染めして蘇らせるアップサイクリングブランド「FROMSTOCK」が誕生

これも非常に面白い取り組み。

アップサイクリング:創造的再利用(クリエイティブ・リユース)のことを指す。リサイクルと異なり、単なる廃棄物の原料化や回収再利用ではなく、より価値の高いものを生み出すことを目的としている。

ECOALF/海洋ゴミから衣類を生み出す

個人的にもっともエモくて美しいと感じるブランド。

サステナブルブランド「ECOALF(エコアルフ)」 2020年春スタート

国内マーケットにおいてはバーバリーを失ってマッキントッシュロンドンが不発だった三陽商会から、というのがよりエモさを引き立てている感じがします。三陽商会はこういう取り組みを増やしていってほしい。

OLDNAVYとforever21の日本撤退

随分と長いこと原宿の一等地にあったこの2店舗が2019年に撤退している。原宿でもダメってのがなんかいろんなことを考えさせられる。日本も撤退しているけど、なんか、そっか、って思うよね。

表現すること・作ること・使うこと

ランウェイで笑って:9巻から

この漫画の見せ場は当然ファッションショーのシーンでとても華やかで楽しいのだけど、作った後・終わったのことを考えると少しナイーブになるのは私だけではないはず。

文化祭後の片付けでゴミになる資材をどんな目で見つめるべきか、みたいな。あの看板作るのめっちゃ大変だったのに壊すの一瞬かよwみたいな、唐突に現実に引き戻されて冷める瞬間のことを考えてしまう。

そもそも教材として用いているものなのでそれに価値が生まれなくても問題はないはずなのだけど、そこに当然生まれてしまうものとして漫然と許してきてしまった「残りカス」みたいなものに、「ものを生み出す・作る側の責任」として真剣に向き合うべき時代なんだろうなあと勝手に思ってる。

いつだって、「ただ作る」だけなら楽しいからな。

うーん。色々考えないといけないな。

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